共生・バリアフリー

“居場所”を超えて ― 役割がつなぐ新たな挑戦

これまで、居場所を探し続けてきた私。

障害があっても、「ここなら大丈夫」と思える場所を見つけ、
そこに根を張ることで自分の安心を育んできました。

でも最近、私は気づきました。
居場所に安住するのではなく、そこから新たな挑戦を始めることこそ、
次の自分のステージなんじゃないか、と。

今回は、居場所を超えて挑戦する決意、
そしてその背中を押した「役割」についてお話しします。

目次

1. 居場所にたどり着くまでの道のり

幼い頃から、私はずっと「居場所」を探していました。

脳性麻痺という障害を抱えて生まれ、
子ども時代から「支えられる側」として生きてきた私。

特別支援学校では、周囲に助けてもらうことが当たり前で、
教室の中で孤立することはありませんでした。

でも、双子の兄が地域の学校に通い、
その話を聞くたび、心の奥では小さな「ずれ」を感じていました。

「自分はこのままでいいのか。」
「このまま、“支えられる側”としてだけ生きていくのか。」

そんな問いを抱えながら過ごしていたのです。

大学に進学し、初めて名刺を作り、
自分の苦手なことや必要なサポートを率直に伝えるようになったことで、
人間関係は少しずつ変わっていきました。

「できないことはできない」と伝えられることで、
相手も安心し、自然な関係を築けるようになった。

そのとき初めて、私は「ここが自分の居場所だ」と思えたのです。

2. 安心から生まれた「次の欲求」

人は安心を手に入れると、次に「挑戦したい」という欲が生まれます。

私も例外ではありませんでした。

居場所を得たことで、ようやく「誰かの役に立ちたい」
「自分の経験を社会に還元したい」という思いが芽生えたのです。

それは最初、小さな講演から始まりました。

福祉専門学校や大学、小中学校、特別支援学校、
そして行政から依頼を受け、障害や福祉に関する講演を行うようになったのです。

最初は緊張で声が震え、資料作りも何度も修正しました。

でも、講演を終えたあと、参加者から
「気づきをもらえました」「勇気が湧きました」という声をもらうと、
私は少しずつ「役割」を実感できるようになったのです。

3. 役割がつなぐ、新たな挑戦

私にとって、もう一つ大きな挑戦だったのが、
青森県で初めて障害平等研修(DET)のファシリテーター資格を取得したことです。

DETフォーラムの公式ページでも紹介されているこの資格は、
障害者自身が社会の偏見やバリアを解きほぐす場を作るためのもの。

「障害は本人の問題ではなく、社会が作るもの」
この考え方を伝える役割を持ったとき、
私はさらに強く思いました。

「これが、私が生きてきた意味かもしれない。」

経験を重ねるほど、私の挑戦は広がっていきました。

講演だけではありません。

ブログや個人サイトを立ち上げ、
自分の言葉で障害や福祉について発信することも挑戦の一つ。

さらに今は、高齢者支援に対する見識を広げるための学習や、
AIに関する学習にも取り組んでいます。

自分の挑戦が、いつか誰かの役に立つ日が来ることを信じて、
日々歩みを進めています。

4. 最後に ― 挑戦し続ける自分であるために

挑戦は、一度すれば終わりではありません。

むしろ、役割を持つことは、
新たなステージに立つことの始まりです。

これからも、私は迷い、悩み、
ときに立ち止まることもあるでしょう。

でも、「自分にできることは何か」
「社会の中で、どんな役割を持てるのか」
その問いを探し続けたい。

私にとって、居場所はゴールではなく、
挑戦のスタート地点。

これからも、役割を胸に、
新しい景色を見に行きたいと思います。

“居場所”をつくるということ ― 自分の役割を探し続けて前のページ

“自分を許す”ということ ― 弱さを抱えたまま前に進む次のページ

関連記事

  1. 共生・バリアフリー

    障害のある人もない人も、どちらにもなる ― おたがいさまの社会へ

    年齢を重ねるにつれて、視力が落ちたり、体力が低下したり、心が揺らぎやす…

  2. 生き方・自己理解

    それでも“言えなかった”あなたへ――伝えられないときの自分を責めないで

    言いたいことはあったのに、どうしても言葉にならなかった。伝えたかったけ…

  3. 障害と向き合う

    “自分を許す”ということ ― 弱さを抱えたまま前に進む

    「あのとき、こうしておけばよかった。」「なんで自分は、もっと頑張れ…

  4. 共生・バリアフリー

    障害当事者が望む配慮と対等な関係

    「配慮してほしい」と「特別扱いされたくない」のあいだ障害当事者として…

  5. 障がい者との関わり方

    障害者が無理して笑うときの気持ち

    「明るくいること」が自分を守る手段だった「笑っていた方が空気を壊さな…

  6. 障がい者との関わり方

    “頼った後”が気まずい…その気持ち、どうすればいい?

    「助けてもらってよかったはずなのに、なんだか気まずい」「頼ったあと、ち…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 障がい者との関わり方

    “対等な関係”ってなんだろう? ― 支援・配慮・遠慮のあいだで
  2. 障害と向き合う

    “お願いする”って勇気がいる【応用編】― 頼れる人をどう見つけるか
  3. 障害と向き合う

    記憶に残る景色は、自分で動いた先にあった
  4. 生き方・自己理解

    “就職=正解”じゃなくていい ― キャリアに悩む障害当事者へ
  5. 共生・バリアフリー

    “いい支援者”ってなんだろう?頼る側・支える側のリアルな距離感
PAGE TOP