障害と向き合う

“できない”って言っていい ― 弱さを認めることが強さになるまで

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「大丈夫」「できます」と言い続けていた自分。でも本当は、少し無理をしていたのかもしれません。できないことを認めることは、負けじゃなくて“信頼”の始まりでした。弱さを見せることが怖かった過去と、今、素直に「できない」と言えるようになったきっかけを綴ります。</p><h2>目次</h2>
<ul>
<li><a href=”#intro”>1. はじめに ── 「できない」は、言っちゃいけない言葉だった</a></li>
<li><a href=”#daijoubu”>2. 「大丈夫」と言い続けていた自分</a></li>
<li><a href=”#yowasa”>3. “弱さ”を出せなかったのは、守るためだった</a></li>
<li><a href=”#univ”>4. 県外の大学で出会った「できないと言わなきゃ始まらない」現実</a></li>
<li><a href=”#tasukete”>5. “助けて”を言えたとき、関係が変わった</a></li>
<li><a href=”#shinrai”>6. “できない”を伝えることは、弱さではなく信頼の証</a></li>
<li><a href=”#conclusion”>7. まとめ ― できないことを言えるから、自分でいられる</a></li>
</ul><h2 id=”intro”>1. はじめに ── 「できない」は、言っちゃいけない言葉だった</h2>
<p>「できますか?」その質問に、私はずっと「はい、大丈夫です」と答えてきました。本当はちょっと不安でも、少し体がつらくても、声がかかる前に「大丈夫です!」と笑っていた気がします。――“できない”って言ったら、負けた気がする。そんな感覚を、私はどこかでずっと抱えていました。</p>
<p>障害があるというだけで、周りの人よりも「できない」と思われてしまうことがある。だからこそ、私は“できる自分”でいなきゃいけないと思っていたんです。でも今、私はようやく言えるようになりました。「それ、できないんです。手伝ってもらえると助かります」。“できない”って言うことは、諦めじゃなくて、つながりのはじまりだった。そう思えるようになるまでの道のりを、今日はお話ししようと思います。</p><h2 id=”daijoubu”>2. 「大丈夫」と言い続けていた自分</h2>
<p>思い返せば、学生時代の私はいつも「大丈夫です!」の人でした。普通高校との交流のときも、バリアフリーとは言えない教室や体育館で、「手伝おうか?」と声をかけられるたびに、「大丈夫!できます!」と笑って答えていました。</p>
<p>「障害があるのにすごいね」と言われることは、正直ちょっと居心地が悪かった。でも、「できない」と言ってしまったら、「やっぱりね」と思われそうで、もっと怖かった。だから、できることはもちろん、ちょっと無理すればできること、本当は誰かの手を借りたいことまで、全部「できること」にして過ごしていたんです。それが、強さだと信じていました。でも今思えば、あの頃の私は、ただただ、“できない自分”を誰にも見せたくなかっただけだったのかもしれません。</p><h2 id=”yowasa”>3. “弱さ”を出せなかったのは、守るためだった</h2>
<p>私は、特別支援学校に通っていました。障害のある子たちが集まる場所で、支援があるのが“あたりまえ”の空間でした。だから、ある意味では“できないこと”を隠す必要もなく、気を張らずにいられる環境だったのかもしれません。</p>
<p>でも、外に出るとそうはいきませんでした。外の世界では、「障害があるから仕方ないよね」と思われたくなかったし、「かわいそう」と同情されるのも嫌だった。だから私は、“できない”という言葉を、自分の中で禁止していたんだと思います。</p>
<p>でも、それは誰かのためじゃなくて、自分の心を守るためだったんです。“できない”と口にしたときに感じる、あの一瞬の沈黙、相手の戸惑い、気まずさ――それを避けたかっただけだったのかもしれません。</p><h2 id=”univ”>4. 県外の大学で出会った「できないと言わなきゃ始まらない」現実</h2>
<p>私が「できない」と向き合わざるを得なかったのは、県外の大学に一人で進学したときでした。知っている人は誰もいない。環境もまったく違う。支援の仕組みも、自分で探さなきゃいけない。私は思いました。「これは、“できない”って言わないと、本当にやばいかもしれない」</p>
<p>誰かに手伝ってもらわないと、時間に間に合わないし、資料も受け取れない。そんなとき、私は自分で名刺を作りました。「できないこと」と「助けてほしいこと」をリストにして、初めて話す人にも配れるようにしました。最初は、すごく怖かった。でも、名刺を渡したときの相手の反応は、意外なほどやさしいものでした。「そうなんだ、教えてくれてありがとう」「分かりやすくて助かるよ」。私は初めて、“できない”を伝えることが関係を築くきっかけになると知りました。</p><h2 id=”tasukete”>5. “助けて”を言えたとき、関係が変わった</h2>
<p>名刺を渡してから、私は気づきました。「助けて」って言えるとき、人は近づいてきてくれる。それまでは、“できるフリ”をしていた私の周りには、“すごいね”と言ってくれる人はいても、“本音で関われる人”はいませんでした。</p>
<p>でも、「助けてほしい」と素直に言ったとき、それをきっかけに、自然に会話が生まれて、「何ができるかな」「どこまでだったら大丈夫?」って聞いてもらえるようになった。ある友達が言ってくれた言葉が、忘れられません。「最初どう関わっていいか分からなかったけど、話しかけてくれてほっとした」。</p>
<p>“できない”を見せることは、相手にとっても安心になるんだと、そのとき分かりました。それからは、必要なことは必要だと伝えるようにしています。</p><h2 id=”shinrai”>6. “できない”を伝えることは、弱さではなく信頼の証</h2>
<p>“できない”を言えるようになって、私は変わりました。まず、気が楽になった。そして、関係が変わった。無理をしなくていいということは、ちゃんと頼れる人がいるということ。それって、とても安心できることなんですよね。</p>
<p>昔の私は、“できる人”でいなきゃ、尊重されないと思ってた。でも今の私は、“できないことを素直に伝えるからこそ信頼される”ということを体感しています。支援者として働く今でも、私は時々「できません」と言います。「こういうのは苦手です」「これはちょっとお願いできますか?」って。そのたびに、「いいよ」と答えてもらえることで、お互いの信頼関係が深まっていくのを感じています。</p><h2 id=”conclusion”>7. まとめ ― できないことを言えるから、自分でいられる</h2>
<p>「できない」って、悪いことじゃない。それは、自分の限界を知っていて、誰かと協力する姿勢を持っているということ。“弱さ”じゃなくて、“人らしさ”。私は今、できないことがある自分を責めるのではなく、「できない」を通じて人とつながれる自分を、大切にしています。</p>
<p>だから、過去の自分に言いたい。「できないって言っていいよ」「それが、あなただけの強さになるから」。</p>
<p>そして、もしこの記事を読んでいる誰かが、“できない”を言えずに悩んでいるなら、そっと伝えたいのです。“できない”って言えるあなたは、きっと、すごく強い人です。</p>
<p>もちろん、今でも「大丈夫です」「まだできます」と言ってしまう自分がいます。それはたぶん、長年の習慣でもあり、ちょっとした防衛反応でもあります。でも、そんな自分も含めて、“できない”を伝えられるようになったことを大事にしたいと思っています。</p>

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