障害と向き合う

“支援する側”だからこそ悩んだこと ― ピアサポーターの葛藤

福祉の現場で、ピアサポーターとして活動してきた中で、
私はたくさんの喜びとやりがいを感じてきました。

障害当事者としての経験を活かし、
同じ立場の人に寄り添えることは、私にとって大切な誇りです。

でも、正直に言うと――
支援する側だからこそ、悩んできたこと、葛藤してきたことがたくさんあります。

今回は、「支援する側の葛藤」をテーマに、
ピアサポーターとして、そして専門職として活動してきた中での迷いや学びをお話しします。

目次

1. ピアサポーターとは? スペシャルピアサポーターとは?

ピアサポーターとは、同じ立場・経験を持つ当事者が、仲間を支える活動をする人のことを指します。

精神疾患や障害を持つ当事者が、同じ悩みや課題を抱える人の話を聞き、寄り添い、支える――
その“当事者性”が、ピアサポートの核です。

一方、スペシャルピアサポーターとは、
ピアサポーターの立場に加えて、社会福祉士、精神保健福祉士、相談支援専門員など、
専門資格や専門職としての知識・スキルを持ち合わせた人を指します。

私自身は障害当事者であり、かつ、社会福祉士・精神保健福祉士・相談支援専門員の資格を持ち、
管理者や児童発達支援管理責任者として働いてきました。

その意味では、専門職の比重が大きい「スペシャルピアサポーター」と言える立場だと思います。

2. 専門職としての重み、当事者としての想い

ピアサポーターとして活動する中で、私は何度も葛藤を感じてきました。

福祉の現場では、専門職としての知識やスキルが求められます。
支援計画の作成、関係機関との調整、制度や法律の理解、
現場を管理・運営するマネジメントの役割。

一方で、私が持つ当事者性は、
「同じ立場だからこそわかる気持ち」や「実体験を通した言葉」という、
専門職とは違った価値があります。

ですが、実際の現場では、
「専門職として正確であること」「責任を持って支援すること」が
優先される場面がとても多いのが現実です。

そうすると、自分の中で問いが生まれるのです。

――私は、当事者としての自分をどれだけ生かせているのだろうか。

――専門職としての立場が強すぎて、当事者としての言葉がかき消されていないだろうか。

3. 葛藤を乗り越えて見えてきたこと

この葛藤は、簡単には解消できないものだと感じています。

でも、最近少しずつ思えるようになってきたことがあります。

「専門職」と「当事者」は、どちらかを選ぶ必要はない。

私は、当事者であり、専門職でもある。
その両方が重なるからこそ、届けられる支援や言葉がある。

支援者としての立場で悩む日もあります。
当事者としての立場で苦しむ日もあります。

でも、その揺らぎがあるからこそ、私はきっと、
目の前の誰かの痛みに、寄り添うことができるのだと思います。

4. 最後に ― 専門性と当事者性を生かして

今、私はこう思っています。

支援者も、ひとりの人間です。

揺れること、迷うこと、失敗すること、
それは決して恥ずかしいことではありません。

専門性に守られすぎず、
当事者性に寄りかかりすぎず、
その間を行き来しながら、
これからも自分らしい支援を届けていきたい。

それが、私が「スペシャルピアサポーター」として、
挑戦を続ける理由です。

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