「言いたいのに、言葉が出てこない」
「伝えたかった気持ちが、うまく言えずに終わってしまった」
誰かと関わるなかで、そんなもどかしさを感じたことはありませんか?
私自身、日々支援者や職場の人とのやりとりのなかで、「本当はこう言いたかったのに」と後から悔やむことがあります。
特に脳性麻痺の当事者として、体の動きや声の出し方に制約があることで、気持ちをスムーズに伝えられない悔しさを感じることも少なくありません。
今回は、「自分の気持ちがうまく言えない」そんなときの心理や背景、そして少しでも自分らしく伝えるための工夫について、私自身の実体験も交えて綴ります。
なぜ、気持ちを伝えるのはこんなに難しいのか
私たちは、「気持ちは言葉にできるもの」と思いがちです。でも、実際には感情を言語化すること自体が、とても高度で繊細な作業です。
「何を伝えたいのか、自分でもわからない」
「言ったことで、相手にどう思われるかが怖い」
「伝えることで関係がこじれるのでは」と不安になる。
こうした思いが頭の中をぐるぐる巡ることで、言葉にする以前に“飲み込んでしまう”こともあります。
また、発話に時間がかかる、思考と言語表現にタイムラグがある、といった障害特性を持つ場合は、そもそも「今この瞬間に言葉にする」こと自体が非常に大きなハードルになることもあります。
伝えられない自分を責めないで
うまく気持ちを伝えられなかったとき、「もっとちゃんとすればよかった」「また言えなかった」と自分を責めてしまうこと、ありませんか?
私も以前、「自分の気持ちをきちんと伝えられる人が大人だ」と思い込んでいました。
でも今は、「伝えたくても伝えられなかった背景」に寄り添ってあげることも、自分にとっての優しさだと感じています。
伝えられなかった=ダメな自分ではない。
それは、あなたが相手を思いやったり、関係性を大切にしようとしていた証拠かもしれません。
自分なりの“伝え方”を見つけていく
私は、事前に伝えたいことをメモしておいたり、音声入力で気持ちを書きなぐって、それをChatGPTなどで整理・要約するという工夫をしています。
こうすることで、自分の中の「ごちゃごちゃした思い」が少しずつ整理され、「これは伝えたい」「これは今は伝えなくてもいい」と冷静に判断できるようになりました。
文章で伝えることが得意な人もいれば、声に出すことで楽になる人もいます。
大切なのは、自分に合った“伝え方のスタイル”を知っておくこと。
それがあれば、「いまは言えないけど、あとで伝えよう」と余裕をもって行動できるようになります。
気持ちは、あとからでも届く
「あのとき言えなかったから、もう遅い」と思う必要はありません。
気持ちは、時間をおいてでも、別の方法でも、ちゃんと届くものだと私は信じています。
たとえばメッセージカード、メール、付箋にひと言…。
タイミングも方法も、必ずしも“その場で言葉にする”必要はないのです。
むしろ、あとから「さっきはこんな気持ちだったんです」と伝えることで、相手との関係が深まることもあります。
まとめ:伝えることは“自分を信じる”ことから始まる
気持ちを伝えるのが苦手でもいい。
時間がかかっても、うまく言えなくても、それはあなたの誠実さの表れです。
自分の思いを丁寧に扱うこと。それを表現しようとする姿勢こそが、あなたの強さです。
言葉にするって難しい。
でも、「うまく伝えたい」と思う気持ちがあるだけで、あなたはすでに大切な一歩を踏み出しています。
焦らず、あなたのペースで、あなたの方法で。
気持ちを大事にできるあなた自身を、まずは信じてみてください。
この記事へのコメントはありません。