他人の成功を目にしたとき、「すごいな」と素直に思えればいいのですが、現実には胸がチクリと痛むことも少なくありません。SNSで友人の昇進や結婚、夢を叶えた報告を見たとき、まぶしさに心がざわつき、自分が取り残されているような感覚に襲われる…。そんな経験は、誰しもあるのではないでしょうか。
私自身も何度もこの気持ちに向き合ってきました。特に障害があると、挑戦できることが限られたり、ペースがゆっくりになったりします。そのため、人の成功を「自分には届かないもの」と感じやすく、無意識に「自分と比べる軸」にしてしまうのです。「同じ年齢なのに」「あの人はできているのに」…そんな考えが頭をぐるぐると回り、劣等感に押しつぶされそうになることがあります。
成功のまぶしさに隠れている気持ち
心理学の視点では、他人の成功を「まぶしい」と感じるとき、そこには羨望(エンビー)と憧れ(アドミレーション)という二つの感情が入り混じっていると言われます。羨望は「自分にはないものを持っていて悔しい」という気持ち。憧れは「自分もあんなふうになりたい」という前向きな気持ちです。どちらも人間として自然な感情であり、決して「悪いもの」ではありません。
ただ、羨望の気持ちにばかり引きずられると、自分を責めたり落ち込んだりしてしまいます。一方で「その成功は自分にとって何を意味するのだろう」と立ち止まって考えることで、憧れの側面に目を向けやすくなり、自分の行動のエネルギーに変えることができます。
「比べる」から「参考にする」へ
他人の成功を見たときに苦しくなるのは、それを「自分と同じ土俵で比べてしまう」からです。けれど実際には、私たちはそれぞれ違う条件や背景を持っています。障害があるかないか、生活環境、サポートの有無、体調の波…。どれひとつとして同じではありません。その中で「同じ結果を出さなければ」と思うこと自体、無理のあることなのです。
そこで役立つのが、他人の成功を「比べる対象」ではなく「参考資料」として見る視点です。たとえば、友人が資格試験に合格したとき、「自分もあの勉強法を真似できるかも」と一部を取り入れる。あるいは「自分はその資格は目指さないけど、努力を続ける姿勢は見習いたい」と方向性だけ参考にする。すべてを比べず、必要な部分だけを切り取って「参考にする」と、心がぐっと軽くなります。
成功を「自分のペース」でとらえる
障害があると、成功の形はどうしても「標準」と言われるモデルとは違ってきます。私自身も、「同世代の人が当たり前にできることが、自分には時間がかかる」「思うように身体が動かず計画どおりに進められない」という現実に、何度も打ちのめされてきました。だからこそ気づいたのは、「自分の成功の基準を、人のものに重ねないこと」の大切さです。
「昨日よりできたことが一つ増えた」「支援を頼む勇気を出せた」―そうした小さな出来事も立派な成功です。それを積み重ねることが、自分の人生を豊かにしていきます。他人の成功と比べる必要はありません。むしろ「自分のペースでできたこと」を大事にすることが、長い目で見たときの大きな力につながります。
「まぶしさ」に押しつぶされそうなときの工夫
もし誰かの成功がまぶしすぎてつらいときは、無理にポジティブになろうとしなくても大丈夫です。「今は比べてしまって苦しいんだな」と自分の気持ちを認めるだけでも、一歩前進です。その上で、次のような工夫を試すのもおすすめです。
・SNSから少し距離を置く(通知をオフにする、見る時間を決める)
・自分の小さな成功を書き留める(日記やメモアプリなど)
・信頼できる人に「今落ち込んでいる」と気持ちを話す
・「あの人はあの人、自分は自分」と言葉にして線を引く
これらはどれも簡単なことですが、続けていくうちに「比べすぎない心の習慣」につながっていきます。
まとめ:誰かの成功は脅威ではなく、光になる
人の成功をまぶしく感じるのは、それだけ自分にとって大事なテーマだからです。だからこそ、「落ち込む自分」を否定する必要はありません。その気持ちを手がかりにして、「自分にとっての成功」をもう一度考えてみる。そうすることで、他人の成功は脅威ではなく、自分を照らす光へと変わっていきます。
誰かの輝きに影を感じるのではなく、「自分の歩みを照らす灯り」として受け止められるように。そんなふうに、一歩ずつ、自分らしいペースで進んでいけたらと思います。
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