「大丈夫?」と聞かれて、「うん、大丈夫」と答えてしまう。
本当は心も体もいっぱいいっぱいなのに、笑ってやりすごしてしまう。
そんな経験、ありませんか?
障害があると、助けが必要な場面はたくさんあります。
でも、「迷惑をかけたくない」「弱いと思われたくない」という気持ちが先立って、
つい「大丈夫です」と言ってしまう。
今回は、“大丈夫”という言葉に隠れている本音と、その背景にある心理について、一緒に考えていきます。
「大丈夫」と言ってしまう理由
「大丈夫」という言葉には、いろんな気持ちが詰まっています。
・心配させたくない
・期待に応えたい
・迷惑をかけたくない
・自分のしんどさをうまく言えない
・断ったら嫌われるかも
どれも、決して悪い気持ちではありません。
むしろ、相手のことを思うがゆえの優しさであり、自分を守ろうとする自己防衛でもあります。
でもその優しさが、いつの間にか「我慢グセ」につながって、心や体をすり減らしてしまうことがあるのです。
私も、「大丈夫」って言ってしまってた
電動車いすで生活する私は、移動や日常生活の中で誰かの手助けが必要な場面がたくさんあります。
それでも、若いころは特に「頼ったら負け」のような気がして、「大丈夫です」「自分でやります」と言い張っていました。
でも本音では、「助けてほしい」「ちょっとでいいから手を貸して」と思っている自分もいて、
そのギャップがつらくて、帰ってからひとりで涙が出ることもありました。
「大丈夫」と言いながら、自分を追い詰めていたのは、ほかでもない自分自身だったのです。
“大丈夫”の裏にある心理
心理学では、「大丈夫」と言ってしまう背景に自尊感情の揺らぎや、過剰適応があると考えられています。
① 自尊感情(セルフエスティーム)の低下
「自分は迷惑な存在かもしれない」「頼ると嫌われるかもしれない」
そんな思いがあると、自分のつらさを表現することに罪悪感を持ってしまい、「大丈夫」という言葉でごまかそうとしてしまいます。
② 過剰適応
周囲の期待や空気を読みすぎて、自分の本音を押し殺してしまう状態。
一見「しっかり者」や「頼れる人」に見えても、内側ではしんどさを抱えているケースが多くあります。
③ 慣れすぎてしまった“我慢”
子どものころから「迷惑をかけないように」「人に頼らず頑張ろう」と言われ続けてきた人ほど、
「我慢するのが当たり前」になっていて、自分のしんどさにすら気づきにくくなっていることがあります。
「大丈夫じゃない」と言えるようになるには
「助けて」が言えるようになるのは、思っている以上にハードルが高いです。
でも、それは甘えでも弱さでもなく、勇気なのだと思います。
① 小さな「助けて」から始める
「重い荷物を持ってもらう」「席を譲ってもらう」など、些細なことで構いません。
「お願いしてもいいんだ」「頼っても関係は壊れないんだ」という経験が、次の一歩を楽にしてくれます。
② 伝える方法を“工夫”する
私は最近、「しんどさをメモに書いて渡す」「チャットGPTで言いたいことを整理する」「LINEで事前に伝える」など、
直接話さなくても自分の思いを伝えられる方法を試しています。
方法は何でもいいんです。「伝えよう」とする姿勢が大切なのだと思います。
③ “信頼できる人”を増やす
全部の人に「大丈夫じゃない」と言わなくてもいい。
まずは1人、言える相手がいれば十分です。
「この人には弱音を吐いても大丈夫」という安心感があるだけで、心の負担は大きく減ります。
まとめ:その「大丈夫」、あなたを守れていますか?
誰かに「大丈夫?」と聞かれて、「うん、大丈夫」と答えたとき。
その言葉は、自分を守るための“盾”にもなるけれど、
気づかぬうちに、自分を孤立させてしまうこともあります。
「大丈夫じゃない」と言えることは、恥ずかしいことではありません。
それどころか、自分の限界を知り、助けを受け入れることができる強さだと私は思います。
つらいときには、どうか自分に優しくしてあげてください。
そして、“大丈夫じゃない私”にも、まるごとOKを出せるような社会であってほしいと、心から願っています。
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