SNSを見ていると、心がざわついたり、落ち込んでしまうことはありませんか。楽しそうな写真、美味しそうな食事、輝いて見える日常…。そんな投稿を目にしたとき、つい「自分と比べてしまう」瞬間は、多くの人が経験しているのではないでしょうか。
私自身も例外ではありません。SNSをスクロールしていると、「同世代の人がこんなに活躍している」「友達が家庭を築いているのに、自分は何もできていない」と感じ、取り残されたような不安に押しつぶされそうになることがあります。障害があると、思うようにできないことや、他者の支援が必要な場面がどうしても多くなります。だからこそ、「あの人は自分の力だけでできているのに、私は…」という比較の気持ちが強まりやすいのだと思います。さらに「嫌われたら支援を受けられなくなるかもしれない」という恐怖感や不安感が重なると、人一倍「人からどう見られているか」を気にしてしまうのです。
比較の心理的な背景
心理学の世界では「社会的比較理論」という考え方があります。人は自分を理解するために、他人と比べる傾向を持つというものです。つまり、比較そのものは人間として自然な行為なのです。ただし、比較には「上方比較」と「下方比較」があります。上方比較は、自分より優れている人と比べることで、「自分も頑張ろう」と刺激を受ける一方で、「自分はダメだ」と落ち込みにつながることもあります。下方比較は、自分より大変な状況の人と比べることで安心感を得ることもありますが、同時に「安心するために誰かを下に見てしまう」不健全さを伴うこともあるのです。
SNSでは、どうしても「上方比較」が強調されやすい仕組みになっています。なぜなら、人は自分の誇れる部分や幸せそうな瞬間を投稿する傾向があるからです。誰も「何もできずに泣いていた一日」を写真付きでアップすることはほとんどありません。つまり、私たちが見ているSNS上の姿は、その人のごく一部の「切り取られた瞬間」でしかないのです。
私自身の経験
たとえば、友人が資格試験に合格した報告を見たとき。最初は「おめでとう」と心から思うのですが、同時に「私は勉強しても結果につながらないことが多い」と落ち込みます。あるいは、同年代の人が結婚や子育てについて楽しそうに投稿しているのを見て、「私はそのような人生を送れないのではないか」と不安にかられることもあります。
これらの気持ちは、SNSを見なければ強くはならなかったかもしれません。でも、私たちは「人の幸せそうな姿」を見れば見てしまうほど、自分と比べて苦しくなるという現実を無視できないのです。
落ち込んだときにできること
では、どうしたらSNSで落ち込みにくくなるのでしょうか。私が実践している、いくつかの工夫を紹介します。
- 「これはその人の一部」と意識する
投稿はその人の人生のほんの一場面であって、全体像ではありません。写真の裏には、見えていない苦労や悩みもあるはずだと意識します。 - SNSを見る時間を区切る
ダラダラと見続けると比較の気持ちが強くなりやすいので、あえて時間を決めて見るようにします。 - 自分の小さな達成を記録する
「今日は疲れたけれど外に出られた」「相手にありがとうを言えた」など、自分なりの小さな前進を書き留めます。すると「自分の歩みも確かにある」と実感しやすくなります。 - SNSから距離を取る勇気を持つ
心が疲れているときは、SNSを一時的に閉じてみるのも立派な選択です。「逃げる」ことは「自分を守ること」でもあるのです。
比較しないために必要な視点
結局のところ、SNSに映る世界は「他人の見せたい部分」であり、私たちの現実とは違います。比べる気持ちをなくすことは難しくても、「比較しすぎて苦しくなっている自分」に気づくことはできます。そしてその気づきが、自分に優しくする第一歩になるのだと思います。
私もまた、承認欲求が強く、人と比べてしまうことからなかなか抜け出せません。けれど「比べる自分を否定しない」「比べてしまうのは自然なこと」と受け止めるようにすることで、少しずつ心が楽になりました。
あなたも、もしSNSを見て落ち込んでしまうときがあったら、「これは切り取られた一部にすぎない」「私には私の歩みがある」と言い直してみてください。その言葉は、きっと心を守る力になるはずです。
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