共生・バリアフリー

“いい支援者”ってなんだろう?頼る側・支える側のリアルな距離感

「自立したいけど、支援も必要。頼れる人がいるって、どういうことだろう?」──そんな問いに向き合うシリーズ第2回は、“頼られる側”である支援者にフォーカス。障害当事者であり支援職でもある私が、支援関係における“ちょうどいい距離感”について考えます。

「支援者=なんでもしてくれる人」じゃない

支援に慣れていない人ほど、「支援者=なんでも助けてくれる、優しくて完璧な人」というイメージを持ちやすいかもしれません。

でも、支援者も人間です。完璧な存在ではありませんし、何でもやってくれる“お世話係”ではありません。

私が支援者側として現場に立っていると、「やってもらって当然」という受け止め方をされることがあります。そのたびに思うのは、「これは支援ではなく“依存”に変わってしまっているかも」ということ。

支援とは、本人の意思と状況に応じて「できること」「必要なこと」をすり合わせていく関係性。支える側と支えられる側、両者のバランスがあってこそ、健全な関係が成り立ちます。

「優しすぎてしんどい」支援もある

私が障害当事者として支援を受けているとき、「なんでもやってくれる人」に出会ったことがあります。声をかける前に察して動いてくれる、困る前に手を差し伸べてくれる……。

一見ありがたいのですが、あるとき私はこう思ったのです。

「私、何もできない人みたいに扱われてるな…」

善意が強すぎると、相手に「あなたは自分ではできないでしょう?」というメッセージが無意識に伝わることがあります。

また、支援者の“やってあげたい”という気持ちが前に出すぎると、当事者が「頼まなくても勝手にやられてしまう」「主体性が奪われる」感覚を覚えることもあります。

“優しさ”は、相手の意思を尊重してこそ、本当の支援になります。

頼る側も「相手を信頼する力」が必要

「支援関係」と聞くと、一方的に支えてもらうイメージが強いかもしれません。でも実際は、支援関係は“信頼のキャッチボール”でできています。

たとえば、「どうしてほしいかを伝える」「遠慮せずに頼る」「できたら感謝を伝える」──これらはすべて、信頼関係をつくる大切な要素です。

特に、頼る側が「自分なんて…」「迷惑かけたら嫌われる」と感じていると、支援者も距離を取りがちになります。

支援者の多くは、「頼ってもらえること」「役に立てること」を喜びと感じている人たちです。勇気を出して信頼のボールを投げてみる。そこから支援関係は始まります。

「私はどうされたい?」を言葉にしてみる

「何かあったら言ってね」と言われても、「何をどう頼めばいいのかわからない…」という経験、ありませんか?

私自身、「困っているけど、どこまで手を借りていいのか」「言ったら迷惑じゃないか」と悩むことがよくあります。

そんなときに効果的だったのは、「私はどうされたいのか?」を自分に問いかけてみること。

  • どこがつらいのか
  • どうしてほしいのか
  • 自分でできそうなことは何か

こうした問いを重ねることで、支援者にも伝えやすくなりますし、自分のニーズに気づくことができます。支援を受けることは、自分を知るプロセスでもあるのです。

「この人になら頼っていい」関係のつくり方

「安心して頼れる人がいない」と感じている方も多いかもしれません。実は、私も昔はそうでした。

でも今では、「この人には相談できる」と思える関係がいくつもあります。それは、“信頼される側の姿勢”だけでなく、“信頼する側の姿勢”も大きく関わっていたと感じます。

支援者との関係を築くうえで、私が意識しているのは次の3つです:

  1. 小さなお願いから始める
  2. できたら「ありがとう」を返す
  3. 無理だったときも怒らない、責めない

これを繰り返すうちに、「お互いに安心できる関係」が少しずつ育っていきました。

まとめ:「いい支援者」は、関係の中で育つ

“いい支援者”は、最初から決まっているものではありません。

支援者の資質ももちろん大事ですが、何より大切なのは、「どう関わるか」という“関係のつくり方”です。

頼る側・支える側、それぞれが相手の気持ちに思いを寄せながら、対話を重ねていくこと。

その過程で、「この人になら頼っていい」と思える支援関係が、きっと生まれていくのだと思います。

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