はじめに
誰かに嫌なことを言われたわけでもないのに、なぜかイライラする。
理由がよくわからないままモヤモヤが続いて、気持ちが沈んでしまう。
そんな経験は、きっと多くの人にあるのではないでしょうか。
特に障害をもって生きる私たちは、日常的に「わかってほしいのに伝わらない」「支援を受ける立場だから強く言えない」といった葛藤を抱えやすく、その積み重ねが知らないうちにイライラやモヤモヤとなって表れることがあります。
では、この感情の正体に気づくにはどうしたらいいのでしょうか。
1. イライラの正体は「隠れた欲求」
心理学では、感情は「自分の大切にしているもの」が満たされないときに生じるといわれます。
例えば、
- 「もっと理解してほしい」という気持ちが満たされない
- 「自分のペースを大事にしたい」という願いが崩された
- 「安心したい」という欲求が脅かされた
こうした“隠れた欲求”が満たされないときに、イライラやモヤモヤが生まれるのです。
つまり感情は敵ではなく、「大事なニーズに気づいてほしい」という心のサインだといえます。
2. モヤモヤを書き出してみる
気持ちの整理に効果的なのは、手帳やノートに「いま感じていること」をそのまま書き出すことです。
- 今日はなぜか疲れた
- あの一言が気になっている
- 本当はこうしてほしかった
言葉にしてみると、漠然とした感情の正体がだんだん浮かび上がってきます。
私は毎日、手帳に「よかったこと」「気づき」「できたこと」を書き留めていますが、その中にモヤモヤしたことも書いておくと、「ああ、自分はこういうことに敏感なんだ」と自覚できるようになりました。
3. 「相手」ではなく「自分の心」に焦点を当てる
イライラやモヤモヤの原因を相手のせいにしてしまうと、解決は難しくなります。
「相手が変わらない限り、私は楽になれない」という思考に陥ってしまうからです。
しかし「自分は何を大事にしたかったのか」「何を守りたかったのか」に目を向けると、感情の根っこが見えてきます。
例えば、
- 「約束を守ってほしい」→ 信頼関係を大事にしている
- 「急な予定変更に混乱した」→ 見通しが持てることを大切にしている
- 「助けてと言えなかった」→ 自分で選びたい気持ちを大事にしている
こうして“自分の心の軸”に気づくと、相手に振り回される感覚が減り、少しずつ落ち着いて対処できるようになります。
4. 小さな工夫で感情に寄り添う
気づいた感情を無理に消す必要はありません。
大切なのは「そう感じている自分を否定しない」ことです。
そのうえで、少し楽になる工夫を取り入れてみましょう。
- 気持ちをノートに書き出す
- 深呼吸して体をほぐす
- 信頼できる人に「ちょっと聞いて」と話す
- 好きな音楽を聴いたり散歩をして気分を切り替える
これらは一見小さなことですが、積み重ねることで「感情を抱えても大丈夫」という安心感が育っていきます。
5. 支援を受けながら気持ちを整える
障害があると、どうしても「人に頼る」「助けてもらう」場面が多くなります。
その中で「迷惑をかけてはいけない」「我慢しなきゃ」と思ってしまうこともあります。
しかし、そうして気持ちを抑え込むことこそ、イライラやモヤモヤの原因になるのです。
支援者に「今日は疲れていて気持ちが不安定です」と伝えることも、自立の一歩です。
感情を隠すのではなく、安心できる人に共有することで、自分自身を支えやすくなります。
おわりに
イライラやモヤモヤは、「心の奥にある本当の願い」に気づかせてくれるサインです。
それを否定せず、少しずつ言葉にしたり、生活の中で工夫して寄り添うことで、自分らしく生きる力になります。
比べるのではなく、自分の感情に耳を傾けること。
それが、日々の小さな安らぎや自己肯定感につながっていくのだと思います。
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