当事者の声

“ゆっくりでいい”と言える強さ ― 自分のペースで生きるということ

「もっと早くしなきゃ」と焦っていた頃

かつての私は、いつも“急いで”いました。
人よりも早く結果を出さなければ。
努力を止めたら置いていかれる。
そう思い込んで、休むことが怖かったのです。

仕事でも、学びでも、何かをしていないと不安になる。
頭では「自分のペースでいい」とわかっていても、
心がそれを許してくれなかった時期がありました。

でも、あるとき気づいたのです。
焦って頑張っても、心がついてこなければ前には進めない。
むしろ、立ち止まる勇気を持ったときこそ、
ほんとうの意味で“進める”のかもしれないと。


焦りの正体は“比較”から生まれる

私たちは無意識のうちに、誰かと自分を比べています。
同世代の人の活躍や、SNSで流れてくる“成功の報告”を見て、
「自分は遅れている」と感じてしまう。

心理学では、これを「社会的比較理論」といいます。
人は他者と自分を比べることで安心を得ようとする生き物ですが、
その比較が過剰になると、自己肯定感を下げてしまうのです。

私も同じでした。
“できる人”を見て落ち込み、
“頑張っていない自分”を責める。

でも、気づいたのです。
比べる相手が変われば、焦りも変わる。
つまり、“他人との比較”は、どこまでいっても終わらない。
本当に大切なのは、
「昨日の自分」と比べてどう進んだかを見ることでした。


私が気づいた“ペースを取り戻す瞬間”

あるとき、体調を崩して仕事を休んだことがありました。
それまでは、休むことを“弱さ”だと思っていました。
でも、何もできない時間の中で、
初めて「今の自分を見つめる」ことができた気がします。

焦っていたときは、
目の前のことを“こなす”ことで精一杯でした。
でも、立ち止まることで、
“なぜそれをやるのか”を考え直すことができた。

そのとき感じたのは――
「止まることは、終わりじゃなく、整える時間」 だということ。

それ以来、私は少しずつ、
「焦らない練習」を始めました。
すぐに結果を求めず、
“今できる一歩”を積み重ねる。
その積み重ねが、いつの間にか道になっていることを知りました。


自分のペースで生きるための3つのヒント

① “今できること”に焦点を当てる

私たちはつい、「これから何をすべきか」「何を達成すべきか」を考えがちです。
でも、遠くばかり見ていると、足元が見えなくなる。

焦りを感じたときこそ、「今、自分にできること」を考える。
それが小さなことでも構いません。
たとえば、「今日は休む」「机を片づける」「メールを一通送る」。
どんな小さな一歩も、確かに“前進”です。


② “誰かと違っていい”と許す

社会の中では、スピードが早い人ほど評価されやすい。
でも、人にはそれぞれ、異なるリズムがあります。

誰かが3歩で進むところを、
自分は10歩かけて進むかもしれない。
でも、歩幅が違うだけで、
“進んでいる”ということに変わりはありません。

私は今、こうして文章を書く仕事や創作を通じて、
「自分のペースを生かす生き方」もあるのだと実感しています。
速さよりも、深さや丁寧さ。
それこそが、私にできる“進み方”です。


③ “休む”を選ぶ勇気を持つ

“頑張る”よりも、“休む”方が勇気がいる。
私はずっとそう思っていました。

でも、心や体を整える時間を持つことは、
前に進むための準備でもあります。

休むことは、あきらめではなく、再生の時間。
焦るときほど、「いま休むことが必要なんだ」と
自分に言い聞かせるようにしています。

“止まること”を恐れずに受け入れられるようになってから、
私の中の“焦り”は少しずつ静まっていきました。


まとめ ― “ゆっくりでも進んでいる”という実感を

「ゆっくりでいい」という言葉は、
決して“あきらめ”や“逃げ”ではありません。

それは、“自分を信じる強さ”の言葉です。
周りと比べず、
自分の歩幅で進むことを選べる人こそ、
本当の意味で前を向いているのだと思います。

どんなに小さな一歩でも、
その一歩は確かに自分の道を作っている。
焦らずに、自分のペースで――
その生き方の中にこそ、穏やかな幸せがあるのではないでしょうか。


🌿 あとがき
「焦らずに生きる」というのは、簡単そうで難しいことです。
でも、焦っていた日々も、立ち止まった時間も、
すべてが今の自分を作っている。

生きるスピードに“正解”はありません。
それぞれが自分のペースで歩いていけること――
それこそが、本当の豊かさなのかもしれません。

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