比較しない生き方

人の評価ばかり気になって、自分の気持ちを見失うとき

私たちは社会の中で生きていく以上、まわりの人の目をまったく気にせずに生きることは難しいものです。特に現代は、SNSなどを通じて「他人の評価」が見えやすくなっている時代。いいねやコメントの数ひとつで、自分の価値が測られているように感じてしまう人も少なくないでしょう。

そして、障害があると、どうしても日常生活の中で人の助けや支援を必要とします。私自身もそうです。だからこそ「もし嫌われたら、必要な支援を受けられなくなるかもしれない」という恐怖や不安が、常に心のどこかにつきまとっています。

その結果、気づけば「相手にどう思われるか」を第一に考えてしまい、自分の本当の気持ちを後回しにしてしまうのです。


「評価を気にしすぎる」悪循環

人の評価を気にすることは、一見すると関係を円滑に保つために役立つこともあります。相手に合わせることで摩擦を避けたり、協力を得やすくなったりするからです。
けれど、その積み重ねは、次第に自分を追い詰めてしまう落とし穴にもつながります。

  • 相手が喜ぶ選択を優先して、自分の希望を押し殺す
  • 「本当は嫌だ」と思っても、嫌われるのが怖くて言えない
  • 「支援してもらえる自分」でなければ価値がないと思い込む

こうした状態が続くと、次第に「私は本当はどうしたいのか」という軸が見えなくなり、心の中に虚しさが広がってしまいます。私もその感覚に何度も陥ってきました。


実際のエピソード①:助けてもらうときの葛藤

たとえば、外出のときに段差を超えるために周囲の人に声をかける場面があります。勇気を出してお願いしたとき、快く手を貸してくださる方が多い一方で、なかには眉をひそめたり、面倒そうな態度を示す方もいます。

そうした反応に触れると、「次からはできるだけ頼まないようにしよう」と考えてしまいます。
でも実際は、自分ひとりの力ではどうにもできない状況がある。そのたびに、「嫌われたらどうしよう」「迷惑だと思われたらどうしよう」と不安になり、心が縮こまってしまうのです。


実際のエピソード②:仕事場での承認欲求

私は福祉の現場で働いていますが、職員としての役割と同時に「車椅子を使っている自分」という視線にもさらされています。

会議の場で意見を出すとき、「ちゃんとしたことを言わなければ、障害があるから仕方ないと見られるんじゃないか」という不安が頭をよぎります。逆に、少しでも高く評価されると、「もっと期待に応えなきゃ」と無理をしてしまいます。

その結果、疲れ果ててしまうことも少なくありません。本当は「もう少しゆっくり準備させてほしい」と伝えたいのに、言えないまま抱え込んでしまい、自分を苦しめてしまうのです。


承認欲求と「自分らしさ」のずれ

私自身、承認欲求が強いタイプです。「誰かに認められたい」「ちゃんとやっていると見られたい」という思いが強いあまり、気づけば自分をすり減らしていることが多くありました。

障害があると「普通ならできるはず」というプレッシャーを感じる一方で、「できないよね」と低く見られてしまうこともあります。その両方の視線にさらされるなかで、私は「せめて頑張っている姿を見せなければ」という気持ちにとらわれてしまいがちです。

けれど、それを繰り返しているうちに、だんだんと「自分がどうしたいのか」が分からなくなってしまうのです。相手に合わせることで一時的には安心できても、後になって心に疲労感だけが残ることも少なくありません。


「自分の声」を取り戻すために

では、どうすれば人の評価に振り回されずに、自分の気持ちを大切にできるのでしょうか。私が意識しているのは、次のような小さな実践です。

  1. 小さな選択を大切にする
    今日着る服、昼食のメニュー、週末の過ごし方…。ほんの些細なことでも「自分はどうしたいか」を問い直す習慣をつけると、自分の感覚を取り戻しやすくなります。
  2. 「やりたい/やりたくない」を書き出す
    私は毎日、手帳に「今日やったこと」「気づいたこと」「良かったこと」を書くようにしています。その中に「やりたい/やりたくない」と感じたことも一緒に残しておくと、自分の本音に気づけるようになりました。
  3. 「相手の評価」と「自分の価値」を切り離す練習
    人にどう思われるかは、自分が完全にコントロールできることではありません。けれど「自分がどう感じたか」「自分が望んだか」は確かに存在していて、そこには揺るぎない意味があります。

まとめ

人からの助けが必要だからこそ、人の評価を気にするのは自然なことです。けれど、それに振り回され続けると、「自分がどうしたいのか」が分からなくなり、生きづらさを感じてしまいます。

大切なのは、「評価を気にしてしまう自分」を責めることではなく、その気持ちに気づいたうえで「では、自分はどうしたいのか」と問い直してみること。

他者の支援と、自分の本音。その両方を大切にするバランスは簡単には見つからないかもしれません。けれど、日々の小さな選択や記録を通じて「自分の声」に耳を澄ませることはできます。

人の評価を完全に無視することはできなくても、自分を尊重する一歩を重ねていくことで、心は少しずつ軽くなっていくのではないでしょうか。

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