「もっとちゃんとしなきゃ」
「こんなことで落ち込んでたらダメだ」
気づけば、いつも自分を追い立てている。
本当はもう、十分がんばっているのに。
私は脳性麻痺で、四肢に麻痺があります。思うように体が動かないことは日常茶飯事です。
それでも「ちゃんとしなきゃ」「甘えてると思われたくない」と、自分を奮い立たせてきました。
けれど、「ちゃんとしよう」と思えば思うほど、体は言うことを聞かず、周りの視線が怖くなり、空回りしてしまう。
今回は、そんな「がんばりたいのにがんばれない」ときの苦しさについて、当事者の視点からお話しします。
「舐められたくない」と思うほど、空回りする現実
福祉の仕事をしていると、「あなたは当事者でありながら、すごくしっかりしてますね」と言われることがあります。
でもその「ちゃんとしている姿」の裏には、「ちゃんとしていないと見下される」「期待されない」と感じてしまう恐れが常にあるのです。
だからこそ、どんなときも気を張って、体がついてこないときにも無理をして――でも結局、余計にうまくいかなくて落ち込む。
「舐められたくない」という想いが、かえって自分を苦しめてしまう。
このループに、何度も心が折れそうになりました。
「完璧にしなきゃ」という思考が、体にもプレッシャーをかける
私たちの心と体はつながっています。
「ちゃんとしなきゃ」と思いすぎると、体にも無意識のうちに力が入ってしまい、動作がぎこちなくなる。呼吸も浅くなる。
結果として、普段ならできることさえうまくいかなくなるのです。
特に、脳性麻痺のような神経系の障害がある場合、「リラックスすること」「脱力すること」自体が難しく、気持ちの緊張はすぐ体の緊張につながります。
がんばろうとするほどできなくなるジレンマ。
これは「努力不足」なんかではなく、「特性」と「環境」から生まれるリアルな困難なのです。
「ちゃんとしていないとダメ」という思い込みに気づく
心理学では、「認知のゆがみ」と呼ばれる思考パターンがあります。
その一つが「全か無か思考」。白か黒かで物事を判断し、「完璧にできなければダメ」と感じてしまう考え方です。
私自身、「支援者として失敗してはいけない」「障害があるからこそ、人一倍しっかりしなきゃ」と思い込んでいた時期がありました。
でもその思い込みが、自分を苦しめ、できないことを余計に増やしていたと気づいたのです。
「ちゃんとしていなくても、自分の価値はなくならない」
そう思えるようになってから、少しずつ肩の力が抜けてきました。
がんばりすぎないことは、手を抜くことじゃない
「手を抜いたらサボってると思われるかも」
そんな不安が、ずっとつきまとっていました。
でも今は、「がんばりすぎない」ことも一つのスキルだと感じています。
力を入れすぎないことで、逆に安定した結果が出せる。周りとも自然に関われる。
“ほどよく”がんばることは、“いい加減”ではなく、“良い加減”なのです。
その「自分なりのちょうどいいバランス」を見つけていくことが、長く働き続けるためにも、穏やかに生きるためにも大切だと思います。
まとめ:「ちゃんとしなきゃ」を手放す勇気
私たちは、「ちゃんとしていないと人に認めてもらえない」と思い込まされてきたのかもしれません。
でも、本当に必要なのは、完璧さではなく「あなたらしさ」だと、今は思います。
できないときがあってもいい。落ち込む日があってもいい。
「がんばりたいけど、がんばれない」その気持ちを、どうか置いてきぼりにしないでください。
あなたのそのままの姿に、意味がある。
誰かと比べなくても、ちゃんとしていなくても、あなたは十分がんばっています。
「がんばらなきゃ」ではなく、「私はもう、がんばってる」
そんなふうに、自分を見つめ直せる時間になりますように。
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