こころのケア

“ひとりで抱えるしかない”と思ってしまうとき

「誰にも頼れない」

「こんなことで迷惑かけられない」

気づけば、何でもひとりで抱え込んでしまっている。

私自身、障害があるというだけで「頼ったら甘えと思われるかも」「できることは自分でやらなきゃ」と自分に言い聞かせてきた経験があります。

でも、限界を超えてしまったときには、誰にも言えず、心がぽきんと折れそうになったこともありました。

今回は、「頼りたいのに頼れない」「しんどいのに助けを求められない」そんな時に感じる葛藤や不安、そしてそこから少しずつ抜け出すヒントについて、当事者の視点からお話ししたいと思います。

「こんなことで頼ったらいけない」と思ってしまう背景

誰かに助けを求めることって、本来はとても自然なことのはずです。

けれど、「障害があるんだから頑張らなきゃ」とか「人に頼るのは迷惑かもしれない」と思ってしまう背景には、これまでの経験や周囲からの視線が影響していることが少なくありません。

例えば、かつて頼ったときに「それくらい自分でできるでしょ」と言われたことがあったり、逆にすごく過剰に手を出された経験があると、「自分で何とかしなきゃ」と心にブレーキがかかってしまうのです。

本当にしんどいときほど、声を上げづらい――これは、障害があるなしに関わらず、多くの人が抱える“あるある”かもしれません。

“頼る=弱さ”じゃない。“頼れない”ことがしんどさを増やす

心理学の研究でも、「社会的サポート」があると人はストレスに強くなれることが分かっています。

つまり、人に頼ることは“心の安全網”を広げる行為でもあるのです。

それでも私たちが頼れないのは、きっと「頼ること=できない人」「甘えてると思われる」という思い込みが根強くあるから。

でも実際は逆で、「頼れる人ほど、自分の状態を客観的に見られる強さがある」と、私は思うようになりました。

しんどいときにしんどいと言える人。
できないときに「手伝って」と言える人。

それは、決して弱さではありません。

“ひとりでがんばる自分”から、“誰かと一緒にいる自分”へ

私は以前、仕事で行き詰まったときに、年下の同僚に「ちょっと助けてほしい」と言えず、結果的に体調を崩してしまったことがあります。

「あのとき素直に言えていたら」と後悔しましたが、それでもその経験から、「誰かに頼る」ことの大切さを身をもって学びました。

それ以来、「できないことを伝える」「SOSを出す」練習を、少しずつ始めました。

最初は怖かった。でも、意外と「いいよ」「言ってくれてありがとう」と受け入れてくれる人が多かったのです。

それは、私が“弱くなった”のではなく、“人とのつながりを信じてみた”からこそ得られた経験でした。

「大丈夫?」のひと言に救われることがある

もしあなたが、誰かの「頼れなさ」を目の前にしている支援者や家族であれば――

ぜひ、「何か手伝えることある?」と声をかけてみてください。

その一言だけで、「あ、頼ってもいいんだ」と感じられる人もいるのです。

私も、何度もその言葉に救われてきました。

そして、「あの人があんなふうに頼ってくれて嬉しかったな」と思えた経験は、次に自分が誰かを頼るときの勇気にもなりました。

“ひとりでがんばらなくてもいい”と気づけたとき、人との関係はもっとあたたかいものになるのだと思います。

まとめ:頼ることは、あなたの誠実さの表れ

「頼る」というのは、自分の弱さをさらけ出す行為ではありません。

本当の意味での“強さ”と“誠実さ”がそこにはあると、私は思っています。

もし今、心がいっぱいいっぱいなら、誰かに少しだけ打ち明けてみてください。

「こんなこと頼んだらダメかな」と思っても、案外、相手は「言ってくれてよかった」と思ってくれるかもしれません。

あなたが一人で背負いすぎないように。

誰かに頼ることが、あなた自身を大切にする一歩になりますように。

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