「早くしたほうがいい」「今のうちに進めたほうが楽になる」――そう思って声をかけたのに、相手がかえって固まってしまった。そんな経験はありませんか?
支える側に悪気があるわけではなく、むしろ心配しているからこそ急ぎたくなるのだと思います。ただ、本人にとっては、急かされることで頭の中がさらに混み合い、動けなくなることがあります。厚生労働省は、障害のある人への関わりで大切なのは、一律に進めることではなく、本人の状況に合わせて参加しやすい形を整えることだと示しています。厚生労働省
今回は、支えているつもりなのに急かす形になってしまうときに見直したい、ペースを守る関わり方3つを整理します。相手の力を置いていかず、でも放っておくわけでもない、その間のちょうどよい支え方を考えていきます。
目次
- 急がせる前に、「今どこで止まっているか」を見る
- 待つ時間を「何もしていない時間」にしない
- できる・できないではなく、「進めやすい形」を一緒に探す
1. 急がせる前に、「今どこで止まっているか」を見る
急かしたくなるときほど、まず見たいのは「まだ終わっていないこと」ではなく、どこで止まっているのかです。
たとえば、やる気がないように見えても、実際には「何から始めればいいか分からない」「言葉がまとまらない」「疲れていて切り替えが難しい」など、止まっている理由はさまざまです。止まっている場所が違えば、必要な支え方も変わります。
「まだ?」「早くしよう」よりも、
「今はどこがいちばん大変?」
「始める前が重い? 途中で止まる感じ?」
と聞くほうが、本人も自分の状態を言葉にしやすくなります。厚生労働省も、気持ちや困りごとを書き出すことで、自分の状況を少し離れて見やすくなると案内しています。厚生労働省
2. 待つ時間を「何もしていない時間」にしない
待つことは、放っておくこととは違います。
本人のペースを守る関わり方では、待ちながら、つながりは切らないことが大切です。
たとえば、
「返事は急がなくて大丈夫です」
「まとまっていなくても、今わかるところだけで大丈夫です」
「必要になったら声をかけてください。こちらからもあとで確認します」
こうした一言があるだけで、本人は“急がされている感じ”よりも、“支えが残っている感じ”を受け取りやすくなります。
厚生労働省のセルフケアの案内でも、つらいときは一人で抱え込まず、今の状態に合う方法を選ぶことの大切さが示されています。支える側が先回りして全部決めるより、本人が動けるタイミングを残しておく関わりのほうが、結果として進みやすいことがあります。厚生労働省
3. できる・できないではなく、「進めやすい形」を一緒に探す
急かしが強くなると、関わりが「できるの? できないの?」の二択になりがちです。ですが実際には、その間にたくさんの調整があります。
たとえば、
- 口頭ではなくメモで伝える
- 一気に全部ではなく、一部分だけ進める
- その場で答えを出さず、後で返事してよい形にする
- 一人で進める前に、最初の一歩だけ一緒に確認する
こうした工夫は、本人の力を奪うためではなく、本人の力が出やすい形に整えるための支援です。合理的配慮の考え方でも、本人に合わせて方法や環境を調整することが大切だとされています。厚生労働省
「早く進めること」が目的になると、本人のペースは置いていかれやすくなります。けれど、「どうしたら進めやすくなるか」を一緒に考える関わり方なら、急がせなくても前に進めることがあります。支援はアクセルだけではなく、ときどきクラッチも必要です。少し地味ですが、この調整がいちばん長持ちします。
まとめ
支えているつもりなのに急かしてしまうときは、
止まっている場所を見ること、待つ時間につながりを残すこと、進めやすい形を一緒に探すことが大切です。
本人のためを思う気持ちがあるからこそ、早く何とかしたくなることは自然です。けれど、相手のペースが守られてこそ、その支えは受け取りやすくなります。
急がせないことは、甘やかしではありません。本人の力が出やすい速さを守る、実用的な支援です。
参考文献・参照先
- 厚生労働省「障害を理由とする差別の解消の推進」
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/sabetsu_kaisho/index.html - 厚生労働省「こころと体のセルフケア」
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/stress/self/index.html - 厚生労働省「今の気持ちを書いてみる」
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/stress/self/self_02.html










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