「前よりできることが増えてきた」
そう感じると、うれしくなるのは自然なことです。支える側としては、「この調子で少しずつ広がっていくといいな」と期待したくなります。けれど、その期待が少し大きくなりすぎると、本人にとってはしんどさにつながることがあります。
たとえば、前より一つできたからといって、次も同じようにできるとは限りません。その日の体調、気持ち、予定の重なり、初めてかどうか、周りの環境などで、やりやすさはかなり変わります。厚生労働省も、こころや体がしんどいときは、その日の気分や体調に合わせて無理のない方法を選ぶことが大切だと案内しています。厚生労働省
また、厚生労働省は、障害の有無にかかわらず、互いに人格と個性を尊重し合いながら、必要かつ合理的な配慮を行うことの大切さを示しています。つまり、「前にできたのだから今回も同じように」と一律に考えるより、その人のその日の条件に合わせて見ることが大切だということです。厚生労働省
今回は、少しできるようになると、つい期待を上げすぎてしまうときに見直したい、無理なく続く支え方3つを整理します。
伸びてきた芽を引っぱって育てようとすると、かえって苦しくなることがあります。水と日あたりは大事ですが、引っぱるのはたいてい逆効果です。支援も少し似ています。
目次
- 「できた」を広げる前に、「何がそろっていたか」を見る
- 期待は上げるより、「続けやすい形」に置きかえる
- うまくいった日を基準にせず、波を前提に支える
1. 「できた」を広げる前に、「何がそろっていたか」を見る
少しできるようになると、支える側はつい「じゃあ次はここも」「これも任せられるかも」と考えやすくなります。
でも、その前に見たいのは、何がそろっていたからできたのかです。
たとえば、
- 時間に余裕があった
- 体調が比較的よかった
- いつもの流れでできた
- 事前に見通しがあった
- 声かけや確認がちょうどよかった
こうした条件がそろっていたから、力が出やすかったのかもしれません。
ここを見ないで「できた結果」だけを広げると、本人にとっては急にハードルが上がったように感じることがあります。
厚生労働省が案内するセルフケアの考え方でも、その日の気分や体調に合わせて方法を選ぶことが大切だとされています。厚生労働省
支援も同じで、「できた」そのものより、できた条件を見るほうが、次につながりやすいです。
2. 期待は上げるより、「続けやすい形」に置きかえる
期待が大きくなりすぎると、本人には「もっとできるはず」「次はこれもやらなきゃ」と伝わってしまうことがあります。
支える側は励ましたいだけでも、本人にはプレッシャーになることがあります。
そんなときは、期待を上げる代わりに、続けやすい形を整えることが大切です。
たとえば、
- 一回できたことを毎回の標準にしない
- 次は少しだけ範囲を広げる
- 難しい日は前の形に戻してよいことにする
- 「できるか」より「続けやすいか」で見る
こうした見方に変えると、支援はずいぶんやわらかくなります。
厚生労働省が示す合理的配慮の考え方も、本人の人格と個性を尊重し、必要に応じて社会的な障壁を取り除くことを大切にしています。厚生労働省
つまり、支援は「できる人に近づけること」ではなく、その人が続けやすい形を一緒に整えることでもあります。
期待は悪いものではありません。
ただ、期待をそのまま目標にすると重くなりやすい。
だから、「もっと」を少し横に置いて、「続く」を真ん中に置く。これだけで支え方はかなり変わります。
3. うまくいった日を基準にせず、波を前提に支える
もう一つ大切なのは、少しできた日を“新しい当たり前”にしないことです。
人の調子には波があります。特に、疲れやすさ、緊張しやすさ、見通しの立ちにくさがある場合は、昨日うまくいったことが今日も同じようにできるとは限りません。
それは後退ではなく、波がある中で進んでいるだけかもしれません。
厚生労働省は、気持ちや考えを書き出すことで、悩みと少し距離を取り、落ち着いて考えやすくなると紹介しています。また、書いたものを読み返すことで、新しい選択肢に気づきやすくなるとも説明しています。厚生労働省
この考え方は、支える側の見方にも役立ちます。
たとえば、
- できた日は何がよかったか
- 難しかった日は何が重かったか
- 助けが必要なのは最初か、途中か、最後か
- 本人が自分でできた部分はどこか
を短く見ていくと、「またできなくなった」ではなく、「今日はこの条件だったから難しかった」と見やすくなります。
波を前提にすることは、甘やかしではありません。
むしろ、現実に合わせた支え方です。
毎回右肩上がりを期待するより、揺れながらでも続けられるほうが、ずっと強い支援になります。
まとめ
少しできるようになると、つい期待を上げすぎてしまうときは、
できた条件を見ること、期待を続けやすい形に置きかえること、うまくいった日を基準にせず波を前提に支えることが大切です。
支える側は、本人の可能性が見えるからこそ期待します。
それは悪いことではありません。
でも、期待が大きすぎると、本人の今のペースが見えにくくなることがあります。
伸びてほしい気持ちがあるときほど、急がせない。
よくできた日があったときほど、標準にしすぎない。
その少し控えめな見方が、結果としていちばん長く続く支え方になるのだと思います。
参考文献・参照先
- 厚生労働省「障害を理由とする差別の解消の推進」
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/sabetsu_kaisho/index.html - 厚生労働省「こころと体のセルフケア」
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/stress/self/index.html - 厚生労働省「今の気持ちを書いてみる」
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/stress/self/self_02.html










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